「急性心不全で入院したのに、もう動いてよいの?」「息切れがあるとき、リハビリは休むべき?」と戸惑う方もいるでしょう。
急性心不全のリハビリは、治療で状態を整えながら、座る・立つ・歩くなどの生活動作を取り戻す支援です。開始や進め方は入院日数だけで決めず、その日の病状に合わせます。
急性心不全でもリハビリが必要な理由
急性心不全は、心臓の働きの問題によって息苦しさなどが新たに現れたり、もともとの心不全が急に悪化したりする状態です。肺や体に余分な水分がたまる「うっ血」や、全身へ十分な血液を送れない状態が起こります。
まずは呼吸や血液の流れを安定させる治療が優先です。一方、寝たままの期間が長くなると筋力や体力が落ち、トイレや着替えも負担になります。リハビリでは、必要な安静を守りつつ、過度な活動低下を避ける方法を考えます。
運動だけでなく、薬・食事・体調管理の理解や退院後の支援も含みます。日本の心不全診療ガイドラインでも、入院中の身体機能低下を防ぐ早期離床と個別的な介入が重視されています。参考:心不全診療ガイドライン
リハビリはいつから始める?
「離床」とは、ベッドから体を起こし、座る・立つなどへ活動を広げることです。主治医と医療チームが、症状や治療への反応を確認して開始を判断します。
安静でも強い息苦しさがある、血圧が不安定、危険な不整脈があるなどの場合は、積極的な運動より治療を優先します。状態が落ち着いてから、できる活動を選びます。最新の欧州心臓リハビリガイドラインでも、医学的な安定の確認と個別判断が前提です。参考:2026年ESCガイドライン
開始前には、主に次の点を確認します。
- 息苦しさ、胸の違和感、めまい、疲労感
- 血圧・脈拍・心電図、呼吸や血液中の酸素の状態
- むくみ、体重・尿量の変化、腎機能などの検査結果
- 酸素や点滴の内容と変更、入院前の歩行・生活状況
検査値一つで判断するものではありません。詳しくは心不全の理学療法評価で確認することをご覧ください。
ベッド上から歩行までの進め方

以下は一般的な流れです。全員が同じ順序や日数で進むわけではなく、休止したり前の段階に戻したりすることもあります。
ベッド上での姿勢調整から座る練習へ
まずは呼吸が楽になる姿勢を整え、必要に応じて介助を受けながら手足を動かします。状態に合わせて背もたれを起こし、ベッドの端や椅子に座る練習へ進みます。
体を起こすと血圧が下がってふらつく場合があるため、症状を確かめながら行います。足の運動も、自己判断で回数を増やすのではなく担当者に確認しましょう。
立つ・移る・短い距離を歩く
座った状態が安定したら、立ち上がりや椅子への移動、病室内の短い歩行を検討します。必要な介助や歩行補助具、酸素・点滴の管理も含めて準備します。
歩行と日常生活の範囲を広げる
歩行中と終了後の反応を見て、距離・時間・回数を調整します。退院先で必要なら、着替えや階段なども確認します。十分に安定した段階で、体力に応じた有酸素運動や筋力・バランス練習を取り入れることがあります。
離床の具体例と評価項目は、心血管疾患のリハビリテーションガイドラインに示されています。入院中の心臓リハビリの全体的な流れも参考にしてください。
進めるとき・休むときに見るポイント
「昨日より長く歩けた」だけでなく、動いている間のつらさと、休んでからの回復が大切です。胸痛、いつもより強い息切れ、動悸、めまい、冷や汗があれば、その場で活動をやめてスタッフを呼びましょう。無理に歩いてナースステーションへ向かう必要はありません。
スタッフは血圧・脈拍・呼吸などの変化も確認します。患者さんは「脚が疲れる」「息が苦しい」を分けて伝えると、内容の調整に役立ちます。運動を休む症状と中止の目安も確認できます。
新人理学療法士は、当日の数値だけでなく、治療の変更、前回の活動への反応、終了後の回復をつなげて記録します。急な歩行能力低下を、意欲の問題と決めつけないことが重要です。
退院後の生活までつなぐ心リハ

退院前には、次の内容を本人・家族・医療チームで共有します。
- 自宅で行ってよい活動と、休憩・介助が必要な場面
- 薬の飲み方と、個別に決めた塩分・水分の管理
- 体重や症状の記録方法、相談が必要な変化と連絡先
- 次回受診、外来リハビリ、必要な在宅支援の予定
家族は入院前の生活、自宅の階段、日中に手伝える人などを伝えてください。水分制限や運動量は全員共通ではありません。
退院後の変化に備えて、心不全が悪化するサインと受診の目安を確認しましょう。継続の方法は退院後・外来の心臓リハビリの内容で紹介しています。
高齢の心不全入院患者を対象とした研究では、入院中または入院直後から退院後まで続ける個別的なリハビリで、身体機能の改善が示されました。ただし、この研究では再入院や死亡の明確な減少は示されていません。参考:REHAB-HF試験
よくある質問
入院何日目から歩けますか?
決まった日数はありません。呼吸や血圧、治療経過、入院前の体力などから判断します。他の患者さんと比べず、今日できる範囲を確認しましょう。
酸素や点滴があってもリハビリできますか?
状態が安定していれば行う場合があります。ただし、治療の内容や必要な量によって判断は異なります。酸素の流量を変えたり、点滴を外したりせず、スタッフの管理下で行います。
疲れた日は休んでもよいですか?
疲れを我慢する必要はありません。体調を伝え、休止や内容の変更を相談してください。急に疲れやすくなった場合は、心不全や別の体調変化の確認も必要です。
退院したら元の運動量に戻してよいですか?
退院時点では体力が十分に戻っていないこともあります。退院前に相談した量から始め、外来での確認を受けながら調整します。
まとめ
急性心不全の心リハは、病状の安定を確認し、ベッド上から座る・立つ・歩くへと活動を広げます。進む速さより、症状と体の反応に合っていることが大切です。入院中から生活上の希望や不安を伝え、退院後の支援につなげましょう。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・離床や運動の許可に代わるものではありません。主治医や担当する医療専門職の指示に従ってください。強い胸痛、急な強い息苦しさ、意識の異常がある場合、入院中は直ちにスタッフを呼び、自宅などでは119番への連絡を優先してください。
参考資料
資料・公開記事の確認日:2026年10月8日
- 日本循環器学会・日本心不全学会:2025年改訂版 心不全診療ガイドライン
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
- Bäck M, et al. 2026 ESC Guidelines on cardiac rehabilitation.
- Kitzman DW, et al. Physical Rehabilitation for Older Patients Hospitalized for Heart Failure. N Engl J Med. 2021;385:203–216.
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