「心臓リハビリでは、どのような運動をするの?」
「心臓病があるのに、筋力トレーニングをしても大丈夫?」
このような疑問や不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
心臓リハビリで行う運動は、ウォーキングや自転車運動だけではありません。準備運動、有酸素運動、筋力トレーニング、整理運動などを、その人の病状や体力に合わせて組み合わせます。
大切なのは、たくさん運動することではなく、安全に継続できる内容を選ぶことです。
この記事では、心臓リハビリで行う主な運動と、運動強度の決め方、安全に続けるための注意点を理学療法士がわかりやすく解説します。
心臓リハビリの目的や効果については「心臓リハビリとは?目的・内容・効果を理学療法士が解説」をご覧ください。
対象となる病気については「心臓リハビリの対象となる病気は?心筋梗塞・心不全・手術後などを解説」で紹介しています。
心臓リハビリで行う運動
心臓リハビリの運動療法は、主に次の内容で構成されます。
- 準備運動・ストレッチ
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
- バランス練習
- 整理運動
すべての患者さんが同じ運動を行うわけではありません。
病気の種類、治療内容、心臓の働き、血圧、心拍数、不整脈、筋力、歩行能力などを確認し、一人ひとりに合った運動内容を決めます。
準備運動とストレッチ
運動を始める前には、軽い体操やストレッチを行います。
準備運動には、身体を徐々に運動へ慣らし、心拍数や血圧の急激な変化を防ぐ役割があります。
主に次のような運動を行います。
- 深呼吸
- 肩や腕をゆっくり動かす体操
- 足首の曲げ伸ばし
- 膝の曲げ伸ばし
- ふくらはぎや太もものストレッチ
反動をつけて強く伸ばすのではなく、呼吸を続けながら無理のない範囲で行います。
心臓手術後などで傷の痛みがある場合は、動かせる範囲が異なるため、医療スタッフの指示に従ってください。
有酸素運動
有酸素運動とは、全身の大きな筋肉を繰り返し動かし、一定時間続ける運動です。
心臓リハビリでは、主に次のような運動が行われます。
- ウォーキング
- トレッドミルでの歩行
- 自転車エルゴメーター
- 軽い体操
- 状態に応じた水中運動など

有酸素運動を継続することで、体力や運動耐容能の改善を目指します。日常生活での息切れや疲れやすさが軽減し、買い物、家事、通勤などを行いやすくなることも期待できます。
ただし、速く歩いたり、長い時間運動したりすればよいわけではありません。
最初は短い時間や軽い負荷から始め、運動中の症状や心拍数、血圧などを確認しながら段階的に調整します。
運動の強さはどのように決める?
心臓リハビリの運動強度は、心肺運動負荷試験(CPX)や6分間歩行試験、心拍数、血圧、自覚症状などを参考に決めます。
CPXを行った場合は、嫌気性代謝閾値(AT)などの結果から、安全かつ効果的な運動強度を設定できます。
検査を行っていない場合には、Borg指数や会話のしやすさを参考にすることがあります。
Borg指数とは、運動のつらさを数字で表す方法です。心臓リハビリでは、一般的に「楽である」から「ややきつい」と感じる範囲が目安として使われます。
また、運動中に無理なく会話を続けられる程度かを確認する「トークテスト」もあります。
ただし、適切な強度は病状によって異なります。数字だけを見て自己判断せず、主治医や心臓リハビリスタッフから指示された範囲で運動しましょう。
心肺運動負荷試験を受けると、運動中の呼吸や循環の反応から、自分に合う運動強度を考える手がかりが得られます。検査内容は、CPXとは?心肺運動負荷試験でわかることをご覧ください。
心拍数だけで判断しない
運動強度の目安として心拍数が使われることがありますが、心拍数だけで安全性を判断できるわけではありません。
次のような場合は、心拍数が運動強度を正確に反映しにくいことがあります。
- β遮断薬など心拍数に影響する薬を使用している
- 心房細動などの不整脈がある
- ペースメーカーを使用している
- 運動しても心拍数が上がりにくい
そのため、心拍数だけでなく、胸部症状、息切れ、疲労感、血圧、心電図なども含めて総合的に判断します。
スマートウォッチの心拍数は体調管理の参考になりますが、それだけで運動の許可や中止を決めないようにしましょう。
1回にどのくらい運動する?
運動時間は、病状や体力によって異なります。
体力が低下している方では、5~10分程度、またはそれより短い運動から始めることがあります。その後、疲労や症状が残らないことを確認しながら、少しずつ時間を延ばします。
連続して長時間運動できない場合は、休憩を挟んだり、朝と夕方に分けたりする方法もあります。
重要なのは、最初から目標時間を無理に達成することではありません。安全に継続できる運動量を積み重ねることが大切です。
筋力トレーニング
心臓病の患者さんでは、入院や安静、活動量の低下によって筋力が落ちている場合があります。
特に足の筋力が低下すると、立ち上がり、歩行、階段昇降などの日常生活動作が難しくなります。
そのため、心臓リハビリでは有酸素運動に加えて、筋力トレーニングを行うことがあります。
主な運動は次のとおりです。
- 椅子からの立ち上がり
- かかとの上げ下げ
- 膝の曲げ伸ばし
- 軽いスクワット
- ゴムチューブを使った運動
- 軽い重りや運動機器を使った運動

最初は、正しい動作を覚えられる軽い負荷から始めます。
一般的には、強い疲労を残さずに10~15回程度繰り返せる負荷が、導入時の目安として使われます。ただし、適切な回数や負荷は患者さんごとに異なります。
筋力トレーニングで息を止めない
重い物を持ち上げるときに息を止めて力むと、血圧が急激に上がる可能性があります。
筋力トレーニング中は呼吸を止めず、力を入れるときに息を吐くことを意識しましょう。
また、限界まで繰り返す運動や、持ち上げられる最大重量に挑戦するような運動を自己判断で行うのは避けてください。
心臓手術後は、傷や胸骨の状態も考慮する必要があります。上半身の運動や重い物を持つ時期については、手術を受けた医療機関の指示を確認しましょう。
バランス練習
高齢の患者さんや、入院によって足腰が弱くなった患者さんでは、バランス練習を取り入れることがあります。
例えば、手すりや安定した台につかまりながら行う立位練習、方向転換、段差昇降などです。
転倒すると骨折や活動量の低下につながる可能性があります。ふらつきがある場合は、一人で無理に練習せず、医療スタッフの見守りや指導のもとで行いましょう。
整理運動
有酸素運動や筋力トレーニングの後は、軽い歩行やストレッチなどを行い、身体を徐々に安静時の状態へ戻します。
運動を急に止めると、血圧が下がり、めまいやふらつきが生じることがあります。
運動後も胸の違和感、動悸、強い息切れ、疲労などが続いていないか確認してください。
運動を中止して相談した方がよい症状
運動中に次のような症状がみられた場合は、運動を中止して休み、医療機関へ相談してください。
- 胸の痛みや圧迫感
- 普段とは異なる強い息切れ
- めまいやふらつき
- 失神しそうな感覚
- 強い動悸や脈の乱れ
- 冷や汗や顔面蒼白
- 吐き気や強い倦怠感
- 足元が不安定になるほどの疲労
症状が強い場合や、休んでも改善しない場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。
体調が悪い日は無理をしない
運動を始める前には、その日の体調を確認します。
特に次のような変化がある日は、運動を休むか、開始前に医療機関へ相談しましょう。
- 安静にしていても胸が痛い
- 息苦しさやむくみが悪化した
- 短期間で体重が大きく増えた
- 血圧や脈拍が普段と大きく異なる
- 発熱や感染症の症状がある
- 強い疲労感や睡眠不足がある
心不全では、体重増加やむくみが病状悪化の兆候になることがあります。
「決められた運動だから」と無理に行うのではなく、体調に合わせて休むことも自己管理の一つです。
自宅で運動するときのポイント
自宅で運動する場合は、次の点を意識しましょう。
- 主治医から運動の許可を得る
- 指示された運動強度を守る
- 準備運動と整理運動を行う
- 運動前後の体調を確認する
- 暑さや寒さの厳しい環境を避ける
- 食後すぐや入浴直後の運動を避ける
- 体調が悪い日は休む
- 症状を我慢しない
一人で運動を始めることに不安がある場合は、外来リハビリへの参加を検討しましょう。
外来リハビリについては「退院後の外来心臓リハビリとは?内容・頻度・期間を解説」をご覧ください。
よくある質問
毎日歩いた方がよいですか?
運動頻度は、病状、体力、運動強度によって異なります。毎日歩くことが適している方もいれば、休息日が必要な方もいます。主治医や心臓リハビリスタッフと相談し、自分に合った頻度を決めましょう。
筋力トレーニングは週に何回行いますか?
一般的には、筋肉を休ませる日を設けながら週2~3回程度行う方法があります。ただし、手術後や体力が大きく低下している場合は、開始時期や頻度を個別に調整します。
自宅でも自転車運動をしてよいですか?
医師から運動の許可があり、安全な負荷が決められていれば行える場合があります。転倒を避けるため、屋外の自転車より固定式の自転車が適している場合もあります。
運動後に疲れるのは問題ですか?
軽い疲労が一時的にみられることはあります。しかし、強い疲労が長時間続く場合や、翌日まで日常生活に影響する場合は、運動量が多い可能性があります。運動時間や強度について医療スタッフへ相談してください。
まとめ
心臓リハビリでは、準備運動、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習、整理運動などを組み合わせます。
運動内容は、病気の種類だけでなく、心臓の状態、症状、体力、筋力、生活環境などに合わせて決めます。
大切なのは、無理をして強い運動を行うことではありません。適切な運動強度を知り、体調を確認しながら継続することです。
運動中の胸痛、強い息切れ、めまい、動悸などを我慢せず、不安がある場合は主治医や心臓リハビリスタッフへ相談しましょう。
医療情報に関する注意事項
この記事は、心臓リハビリの運動療法に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の運動処方や運動の許可を行うものではありません。
適切な運動の種類、強度、時間、頻度は、病状や治療内容によって異なります。
心臓や血管の病気がある方は、自己判断で運動を開始・変更せず、必ず主治医や担当する医療専門職の指示に従ってください。
参考資料
日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン
「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」
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