心不全患者の理学療法評価とは?検査項目と生活への生かし方

「心不全の理学療法評価」の文字と、心臓の記号、評価票、歩行靴、家のイラスト

「心不全なのに、歩く速さや握力も調べるの?」「評価で疲れてしまわない?」。リハビリを受ける前に、こんな疑問を持つ方もいるでしょう。

心不全患者さんの理学療法評価は、心臓への負担に配慮しながら、今の体でできることや生活上の困りごとを確かめるものです。体力の点数をつけるだけでなく、本人に合う運動や支援を考えるために行います。

目次

心不全の理学療法評価では何を調べる?

心不全では、息切れだけでなく、入院中の安静による筋力低下や、食欲低下、動くことへの不安が生活に影響します。理学療法士は医師・看護師などと情報を共有し、次の三つを組み合わせて評価します。

  • 病状と体調:心不全が落ち着いているか、動く前に確認すべき変化はないか
  • 動く力:歩き続ける力、筋力、立ち上がりやバランス
  • 暮らし:入浴・家事・外出の負担、住環境、本人の希望

入院直後と退院前、外来では、必要な評価が異なります。全員が同じ検査を一度に受けるわけではありません。心臓リハビリの初回評価で確認することも参考にしてください。

動く前に心不全の状態を確認する

心臓の記号、体重計、健康記録の手帳を並べ、活動前の体調確認を表したイラスト

「いつもとの違い」を伝える

評価の前には、最近の体調や治療の変化を確認します。

  • 同じ距離でも息切れが増えていないか
  • 横になると苦しい、夜に息苦しくて目覚めることはないか
  • 体重や足のむくみが急に増えていないか
  • 胸の痛み、動悸、めまい、食欲低下はないか

心不全では、体に余分な水分がたまる「うっ血」が起こることがあります。一方、体重の変化だけで原因は決まりません。普段の記録と症状を合わせて医療者に伝えましょう。心不全が悪化するサインと受診の目安で、家庭での確認方法も紹介しています。

血圧や検査結果は組み合わせて見る

血圧・脈拍・呼吸数、血液中の酸素の状態を推定する酸素飽和度などを確認します。立ち上がったときの血圧低下やふらつきにも注意します。

心エコー、心電図、血液検査、服薬内容は、診療情報から把握します。心臓の収縮の指標であるEFや、心臓への負担を反映するBNPなど、一つの数値だけで運動できるかは決めません。腎機能、貧血、薬の影響も考慮します。

病状が不安定なら、歩行試験などを延期して治療を優先します。入院中にどの程度動くかも、医療チームがその日の状態で判断します。参考:心不全診療ガイドライン

入院中の評価を離床へつなげる具体的な流れは、急性心不全の入院中に行う心リハも参考にしてください。

歩く力・筋力・バランスを調べる

両端にコーンを置いた歩行通路、歩行靴、ストップウォッチ、椅子で身体機能の評価を表したイラスト

歩き続ける力を確認する検査

「運動耐容能」とは、体を動かし続ける力です。心臓だけでなく、肺や筋肉の働きも関係します。

6分間歩行試験では、決められた通路で歩いた距離と、息切れや脈拍などの変化を確認します。途中で休むこともでき、距離だけで良し悪しを判断しません。詳しくは6分間歩行試験の方法と結果の見方をご覧ください。

**心肺運動負荷試験(CPX)**では、自転車などで運動しながら、吐く息や心電図、血圧を調べます。体力や運動強度を考える材料になりますが、実施するかは病状や目的で決まります。CPXでわかることと検査の受け方も確認できます。

握力や立ち上がりも生活につながる

握力、膝を伸ばす力、歩く速さ、椅子からの立ち上がりなどを調べます。SPPBという評価では、立った姿勢のバランス・歩行・椅子からの立ち上がりを組み合わせます。

高齢の心不全患者さんを対象とした研究では、筋力・バランス・移動・持久力に合わせたリハビリによる身体機能の改善が報告されています。ただし、その研究では再入院の明確な減少は示されておらず、効果を一律には約束できません。参考:REHAB-HF試験

測定中は、息切れや脚の疲れを数字で伝える「Borg scale」を使う場合もあります。検査の前後だけでなく、途中の症状や回復までの様子も大切です。つらさを我慢せず伝えてください。参考:心血管疾患のリハビリテーションガイドライン

評価結果を日常生活とリハビリに生かす

同じ距離を歩けても、家の階段や買い物の荷物によって必要な支援は変わります。食事、着替え、トイレ、入浴などの日常生活動作に加え、家事や外出の様子も確認します。

例えば「店まで歩けるが、帰りは疲れる」なら、歩く力だけでなく、休憩場所や荷物の持ち方、家族の協力を相談できます。退院後の家事・階段・外出の考え方も役立ちます。

食欲、体重の減少、気分の落ち込み、薬や体調を管理する難しさも共有しましょう。必要に応じて管理栄養士や退院支援の担当者などにつなぎます。「もう一度近所の店へ行きたい」といった希望は、目標を決める大切な情報です。

新人理学療法士が押さえたい評価のつなげ方

検査項目を埋めるだけでなく、次の順序で考えます。

  • 実施前:症状と治療経過を確認し、実施の可否や中止基準をチームで共有する
  • 実施中・実施後:負荷量、症状、循環・呼吸の反応、終了理由、回復を記録する
  • 結果の解釈:心不全の変化だけでなく、筋力低下、関節痛、貧血なども検討する
  • 再評価:補助具や測定方法などの条件をそろえ、生活上の変化と合わせて見直す

「昨日より歩けない」を、すぐに意欲や体力の問題と捉えないことが大切です。判断に迷う所見は医師や先輩、多職種に相談します。

よくある質問

体力が落ちていても評価を受けられますか?

状態に応じて、寝返りや座る動作の確認から行うこともあります。歩行試験が難しくても、生活や症状の聞き取りは役立ちます。家で検査を練習したほうがよいですか?

結果が低いと運動できませんか?

数値だけでは決まりません。病状や生活目標に応じて、運動の種類・強さ・時間、必要な介助を調整します。主治医や担当者に相談しましょう。

家族は何を伝えるとよいですか?

本人の了解を得て、以前より休む回数が増えた、食事量が減ったなど、日常の変化を伝えてください。お薬手帳や体重・血圧の記録も参考になります。

まとめ

心不全の理学療法評価は、病状、動く力、暮らしを結び付けるために行います。過去の自分との変化や、できるようになりたいことを共有し、医療チームと無理のない目標を考えましょう。

医療情報に関する注意事項

本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・運動処方に代わるものではありません。評価や運動の開始・変更は、主治医や医療専門職に相談してください。急な強い息苦しさ、持続する強い胸痛、意識の異常がある場合は、評価や運動より119番への連絡を優先してください。

参考資料

資料・公開記事の確認日:2026年9月25日

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この記事を書いた人

理学療法士(2021年免許取得)。心不全療養指導士(2022年取得)、心臓リハビリテーション指導士(2023年取得)。循環器領域で心臓リハビリテーションに従事し、専門的な内容を患者さんやご家族、医療職・学生にもわかりやすく解説しています。

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