「最近、階段で息が切れる」「足がむくむけれど、心臓と関係があるの?」――そんな疑問を持つ方もいるでしょう。心不全は病名を聞いただけでは、どのような状態なのか想像しにくいものです。
この記事では、心不全の症状や原因、治療の考え方、毎日の暮らしで確認したいことを説明します。症状が心不全によるものかどうかは、診察や検査を受けて判断する必要があります。
心不全とは?心臓に何が起きている?
心不全とは、心臓に病気や負担が生じ、全身に血液を送る働きが十分でなくなったり、心臓に血液が戻りにくくなったりして、息切れやむくみなどの症状が現れる状態です。心臓が「止まった」という意味ではありません。
心臓の働きが落ちると、体に必要な血液が届きにくくなり、疲れやすさにつながります。また、血液の流れが滞ると、肺や体に水分がたまり、息苦しさやむくみが現れることがあります。
心不全の経過は人によって異なります。治療で症状が落ち着いても、体調が変化することがあるため、原因の治療と日々の体調確認を続けることが大切です。
心不全でみられる主な症状
息切れ・息苦しさ
初めは坂道や階段で息切れし、進行すると平地を歩くときや安静時にも苦しくなることがあります。横になると息苦しく、上体を起こすと楽になる、夜間に息苦しさで目が覚める、といった変化にも注意が必要です。
心不全の原因となる弁の病気については、心臓弁膜症の主な種類と症状で詳しく解説しています。
むくみ・急な体重増加
足の甲やすね、足首にむくみが出ることがあります。体内に水分がたまると、食事量が増えていなくても短期間で体重が増える場合があります。ただし、むくみや体重増加には心臓以外の原因もあります。
疲れやすさ・食欲の低下
以前はできていた家事や散歩がつらい、疲労感が強い、食欲が落ちた、といった変化が現れることもあります。高齢の方では、はっきりした息切れより先に「活動量が減った」と気づく場合もあります。

急に強い息苦しさが出た、安静にしても呼吸が苦しい、胸の痛みや意識の異常がある場合は、速やかに救急相談・救急要請を検討してください。 いつもより息切れやむくみが増えた、体重が急に増えた場合も、放置せず主治医や受診先へ連絡しましょう。連絡する目安は、退院時などに個別に確認しておくと安心です。
心不全の主な原因と悪化のきっかけ
心不全につながる病気には、高血圧、心筋梗塞などの冠動脈の病気、心臓の弁の病気、心筋症、不整脈などがあります。腎臓の病気などが重なり、治療や体調管理に影響することもあります。
また、感染症、薬の中断、塩分の多い食事、不整脈などをきっかけに症状が悪化する場合があります。原因は一つとは限りません。再び体調を崩さないためにも、検査で原因や現在の心臓の状態を確かめます。
心不全はどのように調べる?
診察では、症状がいつから始まり、何をすると強くなるかを確認します。そのうえで、血液検査、心電図、胸部エックス線、心臓超音波検査などを組み合わせて判断します。
血液検査の「BNP」や「NT-proBNP」は、心臓への負担をみる手がかりです。ただし、数値だけで心不全と決めることはできません。心臓超音波検査では、心臓の動きや弁の状態などを調べます。必要な検査は症状や持病に応じて異なります。
心エコーの結果にあるEFの読み方は、EFの数値の意味と心不全の分類も参考にしてください。
採血結果の読み方は、BNP・NT-proBNPの意味と数値を見るポイントで詳しく解説しています。
新人理学療法士の方は、検査値だけで運動の可否を判断せず、症状の変化、バイタルサイン、医師の方針を合わせて確認する視点が重要です。
心不全の治療は何をする?
治療は、症状を和らげること、原因となる病気に対応すること、再び悪化する可能性を減らすことを目指します。心臓の働きや併存する病気によって、選ぶ方法は変わります。
薬による治療
体にたまった余分な水分を減らすために利尿薬を使うことがあります。また、心臓の状態に応じて、心臓への負担を減らし、経過の改善を目指す薬を組み合わせます。薬の種類や量は人によって異なるため、自己判断で中止・増減せず、副作用が気になるときも処方元へ相談してください。
原因への治療と心臓リハビリ
弁の病気や不整脈など、原因によっては処置や手術、医療機器による治療を検討します。病状が安定した後の心臓リハビリは、体力や生活動作の回復に加え、病気の理解、服薬、食事、体調管理も支える取り組みです。心臓リハビリの目的と内容も参考にしてください。
運動を始める時期や内容は一律ではありません。心不全の運動療法と注意点を確認し、実際の運動量は主治医や心臓リハビリの医療専門職と決めましょう。退院後の支援については、外来の心臓リハビリで行うことでも紹介しています。
日常生活で気をつけたいこと
体重と症状を記録する
できれば毎日、同じ条件で体重を測りましょう。朝、排尿後など、測るタイミングをそろえると変化に気づきやすくなります。血圧・脈拍を測るよう指示されている方は、その値も記録します。
体重のほかに「息切れが増えたか」「足がむくんでいないか」「普段の活動がつらくないか」を一緒に見てください。数値だけで判断せず、自分の普段の状態からの変化を伝えることが役立ちます。
記録した体重や症状をどう見ればよいかは、心不全が悪化するサインと受診の目安で詳しく紹介しています。
食事・水分・薬を自己判断で変えない
塩分の取り過ぎには気をつけましょう。一方で、食欲が落ちている方や体重が減っている方には、栄養不足への配慮も必要です。水分をどの程度取るかも病状によって異なるため、一律に制限せず主治医に確認してください。
薬を飲み忘れたときの対応や、市販薬・サプリメントを使いたいときは、医師や薬剤師に相談しましょう。

動く量は体調に合わせて相談する
状態が安定していれば、適切な運動や日常の活動を続けることが大切です。ただし、息切れが強い日や体重・むくみが急に変化した日は、予定どおりの運動を無理に行わず、医療専門職へ相談してください。運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまいなどが出た場合は中止して対応を確認します。
よくある質問
心不全は治りますか?
心不全は治る病気ではなく、症状が改善する病気です。一番は再発させないことが大切です。見通しは原因や心臓の状態によって異なるため、ご自身の場合を主治医に確認してください。
むくみがなければ心不全ではありませんか?
むくみが目立たなくても、心不全の可能性はあります。息切れや疲れやすさなど、ほかの変化も含めて診察を受けることが大切です。
心不全でも歩いてよいですか?
病状が安定していれば、歩行を含む運動を行えます。ただし、開始時期、強さ、時間は個別に判断します。退院直後や症状が変わったときは、主治医や心臓リハビリの担当者に相談してください。
体重は何キロ増えたら連絡すべきですか?
連絡の目安は、普段の体重や治療内容によって異なりますが、1週間で2〜3kgの増加は要注意です。短期間の急な増加に息切れやむくみが伴うときは、早めに相談してください。自分用の連絡基準を診察時に決めておきましょう。
まとめ
心不全は、心臓の働きに問題が生じ、息切れやむくみ、疲れやすさなどが現れる状態です。原因や治療法は人によって違います。毎日の体重と症状の変化を記録し、いつもと違う状態に気づいたら、決めておいた方法で医療機関へ相談しましょう。
医療情報に関する注意事項
この記事は一般的な情報であり、診断や個別の治療方針に代わるものではありません。薬、食事・水分、運動、受診の目安は、ご自身の病状に合わせて主治医や医療専門職と決めてください。急な強い息苦しさなどがある場合は、緊急の対応を優先してください。
参考資料
- 日本循環器学会・日本心不全学会『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』
- 国立循環器病研究センター『心不全』
- 日本心臓リハビリテーション学会『心臓病の運動療法について Q.7』
- 日本心臓リハビリテーション学会『心臓リハビリテーションとは』
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