「歩くと胸が苦しくなるけれど、休むと治まる。狭心症でしょうか?」「診断されたら、運動はやめるべき?」と気になる方もいるでしょう。
狭心症は、心臓の筋肉に必要な酸素が十分に届かず、胸の圧迫感などが起こる病気です。原因や病状に合った治療を受け、生活を整えていくことが大切です。
今、強い胸の圧迫感や冷や汗、強い息苦しさがある場合は、読み進めるより先に119番へ連絡してください。
狭心症とは?心筋梗塞との違い
心臓の筋肉は「冠動脈」という血管から酸素を受け取っています。この血流が不足する状態を「心筋虚血」と呼びます。狭心症は、心筋虚血によって胸の痛みや締め付け感などが生じる病気です。
心筋梗塞では、血流不足が続いて心臓の筋肉の一部が壊死します。狭心症では通常、こうした壊死は起きていません。ただし、痛みの強さや長さだけで両者を見分けることはできません。[1]
詳しくは、心筋梗塞の症状と治療もご覧ください。
狭心症の症状と受診の目安
胸の痛み以外の症状もある
代表的な症状には、次のようなものがあります。
- 胸が押される、締め付けられる、重く感じる
- 肩、腕、背中、あご、みぞおちに痛みや違和感がある
- 動くと息苦しい、胸が詰まる感じがする
労作性狭心症では、坂道や階段などで症状が出て、休むと数分ほどで治まることがあります。一方、安静時に起こるタイプもあり、胸痛が目立たない場合もあります。症状が治まっても、繰り返す場合は受診してください。[1]
救急車を呼ぶ症状
次の場合は、心筋梗塞などの緊急性がある病気を考え、119番へ連絡してください。
- 強い胸痛・圧迫感、冷や汗、強い息苦しさ、意識が遠のく感じがある
- 胸の症状が休んでも治まらない、または繰り返して悪化している
「何分たつまで待つ」と決めず、自分で車を運転しないでください。初めての胸痛、以前より軽い動作で出る症状、回数や持続時間の増加は、治まっていても速やかな医療機関への相談が必要です。[2]
発作時の薬を処方されている方は、主治医から指示された方法で使用します。ただし、強い症状があるときは、薬の効果を待って救急要請を遅らせないでください。
狭心症の原因と主なタイプ
動脈硬化による狭心症
冠動脈の壁にコレステロールなどがたまり、血液の通り道が狭くなると、運動時に増える酸素の需要に供給が追いつかなくなります。喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが関係します。[3]
動脈硬化は脚の血管にも起こります。歩くとふくらはぎが痛み、休むと軽くなる場合は、下肢閉塞性動脈硬化症の症状と検査も確認し、主治医へ相談してください。

冠攣縮性狭心症・微小血管狭心症
冠攣縮性狭心症は、冠動脈が一時的に強く縮んで起こります。夜間や早朝の安静時に症状が出ることがあります。
微小血管狭心症は、心臓の細い血管が十分に広がらないなどの機能異常が関係します。太い冠動脈に目立つ狭まりがなくても起こるため、検査で「大きな狭窄はない」と言われた後も、症状が続く場合は相談が必要です。[4]
不安定狭心症は早急な評価が必要
新しく強い症状が出た、安静時にも起こるようになった、以前より頻回になった場合などは、不安定狭心症が疑われます。心筋梗塞とともに「急性冠症候群」に含まれ、早急な評価・治療が必要です。自己判断で運動を試さないでください。[2]
狭心症の検査と治療
検査は症状に合わせて選ぶ
診察では、症状の出る場面、続く時間、休んだ後の変化を確認します。心電図、心エコー、冠動脈のCT検査、運動や薬で負荷をかける検査などを組み合わせ、必要に応じてカテーテル検査を行います。
発作がないときの心電図だけでは、狭心症を否定できません。急性心筋梗塞が疑われる場合は、心筋の傷害を調べる血液検査なども必要です。症状を再現しようと、自宅で階段昇降などを試すのは避けましょう。[1、5]
心電図が正常でも症状の相談が必要な理由は、心電図でわかること・わからないことも参考にしてください。
薬・カテーテル治療・手術
治療は、症状の軽減と心筋梗塞などの予防を目指します。
薬物療法:心臓の負担や血管の収縮を抑える薬などを使います。動脈硬化を伴う場合は、脂質を下げる薬や血栓を予防する薬なども検討します。
カテーテル治療:必要な場合に、風船やステントで狭い部分を広げます。
冠動脈バイパス手術:別の血管で血流の通り道を作る方法です。
全員にステントや手術が必要なわけではありません。狭まりの場所、血流不足の程度、症状、合併症、本人の希望を踏まえて選びます。[5]冠攣縮性狭心症ではカルシウム拮抗薬などが中心となり、原因によって薬の選び方も異なります。[4]
狭心症でも運動できる?心臓リハビリの役割
病状が安定し、医師が可能と判断した場合は、適切な運動が体力や生活の質の改善に役立つことがあります。不安定な症状がある時期は、運動より評価・治療が優先です。[6]
心臓リハビリの目的と内容には、運動だけでなく、服薬・食事・禁煙の支援や生活上の相談も含まれます。

自分に合った運動と生活管理
歩く速さ・時間・頻度は、検査結果や症状に応じて決めます。胸痛を我慢して続けたり、「毎日同じ歩数」を優先したりしないことが大切です。
- 運動前に体調を確認し、指示された範囲で行う
- 胸の違和感、冷や汗、めまいなどが出たら中止する
- 薬を自己判断で減らさず、禁煙や血圧・脂質・血糖の管理を続ける
具体的な運動を中止する症状と相談の目安も確認しておきましょう。[3、6]
新人理学療法士は、発作の誘因・頻度の変化、治療歴、服薬、運動時の症状や心電図・血圧の反応を確認します。心臓リハビリの初回評価項目を参考に、医師と運動条件や中止基準を共有してください。[6]
よくある質問
休むと治まる胸痛なら放置してよいですか?
放置せず受診してください。休息で改善することは狭心症の特徴の一つですが、症状だけで診断や安全性の判断はできません。[1]
狭心症は必ず心筋梗塞になりますか?
必ず進むわけではありません。ただし、症状の変化には注意し、治療と生活管理を継続することが大切です。[2、3]
ステントを入れたら薬はやめられますか?
自己判断で中止しないでください。治療後も、血栓予防などのために薬が必要です。出血などが気になる場合は、処方した医師へ相談しましょう。[5]
家族は何を準備しておくとよいですか?
発作時の対応、処方薬の使い方、緊急連絡先を本人と共有しましょう。症状の記録は受診に役立ちますが、緊急時は記録より救急要請を優先してください。
まとめ
狭心症は心臓の酸素不足で起こり、原因には動脈硬化や血管の収縮などがあります。強い症状や普段と違う変化には早めに対応し、安定後は主治医や心リハスタッフと相談して、自分に合う治療・運動・生活管理を続けましょう。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・運動処方に代わるものではありません。薬の変更や運動開始は主治医に相談してください。強い胸部症状などがある場合は119番へ連絡してください。
参考資料
情報確認日:2026年9月28日。
- [1]国立循環器病研究センター「虚血性心疾患」
- [2]国立循環器病研究センター「急性冠症候群」
- [3]厚生労働省「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
- [4]日本循環器学会ほか「2023年JCS/CVIT/JCC ガイドラインフォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療」
- [5]日本循環器学会ほか「2022年JCS ガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」(2026年6月25日更新)
- [6]日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会ほか「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」
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