下肢閉塞性動脈硬化症とは?症状・検査・治療と歩行リハビリの注意点

下肢閉塞性動脈硬化症の症状・治療と歩行リハビリを示す、狭くなった動脈と歩行用の靴のイラスト

「歩くとふくらはぎが痛くなり、休むとまた歩ける。年齢のせいでしょうか?」

こうした症状には、脚の動脈の血流が不足する「下肢閉塞性動脈硬化症」が関係することがあります。腰や関節の病気でも似た症状が起こるため、自己判断せず調べることが大切です。

この記事では、受診の目安、検査・治療、心臓リハビリでの歩き方を解説します。

目次

下肢閉塞性動脈硬化症とは

動脈硬化によって脚へ血液を送る動脈が狭くなったり詰まったりし、筋肉や皮膚に酸素が届きにくくなる病気です。「ASO」と呼ばれ、末梢動脈疾患(PAD)のうち、動脈硬化が原因のものに当たります。

広い内腔を保った動脈と、壁のプラークによって血液の通り道が狭くなった動脈の比較模式図

喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病などが関係します。脚だけでなく心臓や脳の動脈にも病気が併存することがあるため、全身の血管を守る視点が必要です。[1、5]

心臓の血流不足については、狭心症の症状と治療も参考にしてください。

主な症状と受診の目安

歩くと痛み、休むと楽になる

代表的なのは「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」です。歩くとふくらはぎや太もも、お尻などが痛む・重くなるため立ち止まり、休むと軽くなって再び歩けます。冷たさやしびれを感じることもあります。

ただし、典型的な痛みがない人もいます。糖尿病による感覚の低下や、もともとの歩行量の少なさで、症状が目立たない場合もあります。「痛くないから血流は問題ない」とは判断できません。[1、4]

繰り返す症状や歩ける距離の短縮があれば、かかりつけ医、循環器内科、血管外科へ相談しましょう。

安静時の痛みや治りにくい傷は早めに相談

次の場合は、歩いて様子を見ず、速やかに医療機関へ連絡してください。

  • じっとしていても足先が痛む、夜に痛みで目が覚める
  • 足の傷が治りにくい、皮膚が黒く変色している
  • 傷の周囲が赤く腫れる、膿や発熱がある

重い血流不足で足が傷つきやすい状態は「包括的高度慢性下肢虚血」と呼ばれ、血流と傷・感染を合わせた評価が必要です。全員がこの状態まで進むわけではありません。[1、2]

突然、脚が強く痛み、冷たくなる・白くなる・しびれる・動かしにくくなる場合は、急な動脈の閉塞が疑われます。119番へ連絡し、自分で歩いて確かめないでください。[2]

どのような検査をする?

診察では、症状の出方、足の脈、皮膚の色や傷を確認します。基本となる検査の一つが、足首と上腕の血圧を比べる「ABI(足関節上腕血圧比)」です。

一般にABIが0.90以下なら末梢動脈疾患が疑われます。ただし、糖尿病や腎臓病などで血管が硬い場合は、値が高く出て血流不足を見逃すことがあります。必要に応じて、足趾の血圧、運動後のABI、超音波検査などを追加します。血管の詳しい位置や治療方法を検討する際は、CTなどを用います。[4]

歩行能力の把握には、6分間歩行試験の方法と結果の見方も役立ちます。ただし、この検査だけで血管の詰まりを診断するわけではありません。

治療は脚と全身の血管を守るために行う

治療の目標は、歩きやすさを改善すること、足の傷を防ぐこと、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを減らすことです。

  • 生活・危険因子の管理:禁煙を支援し、血圧・血糖・脂質を管理します。
  • 薬物療法:病状に応じ、血栓を防ぐ薬や脂質を下げる薬などを使用します。
  • 運動療法:病状が安定した間欠性跛行では、計画的な歩行練習が治療の柱になります。[1、3]

生活に支障のある症状が十分改善しない場合や、足を守るために血流改善が必要な場合は、カテーテル治療やバイパス手術などの「血行再建」を検討します。方法は血管の状態、全身状態、本人の希望などから決めます。治療後の血栓予防薬も、出血リスクを踏まえて選びます。[2]

心臓リハビリで行う歩行練習

歩行と休憩を組み合わせる

医療スタッフが見守る運動療法や、専門職の支援を受けて自宅で行う計画的な運動は、歩行能力や生活の質の改善に役立つとされています。「とにかく毎日歩く」という助言だけでなく、負荷の調整と継続支援が重要です。[3、4]

歩行用の靴と椅子を循環する矢印でつなぎ、歩行と休憩を繰り返す運動療法を表した図

一般的には、歩行で脚の痛み(間欠性跛行)が出現したら休み、落ち着いてから再び歩きます。歩く速さ、休む痛みの程度、時間・頻度は、心臓の状態や足の血流に合わせて設定します。強い痛みを我慢して歩き続ける方法ではありません。[1、3]

胸痛、強い息切れ、めまいは、歩行練習で想定する脚の痛みとは別です。その場で運動を中止し、運動を休むべき症状と中止の目安に沿って対応してください。

安静時の足の痛み、治りにくい傷、不安定な心臓の症状があるときは、運動量を増やすより診察・治療を優先します。[1、3]

通院と自宅での取り組みをつなぐ

通院が難しい場合も、歩行記録や定期的な相談を使い、続けられる計画を立てます。外来の心臓リハビリの内容と受け方を参考に、下肢の運動療法に対応する施設を主治医へ相談しましょう。[3、4]

新人理学療法士は、痛みの場所・出現距離・休息後の回復、足の傷、血圧や心拍、胸部症状を確認します。歩行距離だけでなく「買い物で休む回数」などの生活目標も共有してください。[3]

毎日の足のケアも大切

毎日、足の甲・裏・指の間に傷や赤みがないか確認しましょう。見えにくい部分は鏡や家族の助けを使います。

  • 足を清潔にし、洗った後は指の間も乾かす
  • 靴ずれを防ぐため、足に合う靴と靴下を使う
  • 裸足を避け、靴の中の異物も確認する
  • 湯たんぽなどを直接当てず、低温やけどに注意する
  • 傷や爪のトラブルを無理に自分で処置せず相談する

足の保護は、治療後も続ける大切な習慣です。[4、5]

よくある質問

足が冷たいだけでも、この病気ですか?

冷たさだけでは診断できません。左右差、歩行時の痛み、傷の有無などと検査を合わせて判断します。気になる変化が続く場合は相談してください。[5]

歩けば詰まった血管が元に戻りますか?

運動で血管の詰まりが必ず解消するわけではありません。筋肉の働きなどが変わり、血圧比が変化しなくても歩きやすくなる場合があります。[1]

ステントや他の手術をすると完治しますか?

完治はしますが、再発予防の動脈硬化管理は続きます。服薬、禁煙、足の観察、定期受診を継続し、運動の再開時期も確認しましょう。[2、4]

まとめ

下肢閉塞性動脈硬化症は、脚の血流が不足する病気です。歩くと痛み、休むと軽くなる症状は受診のきっかけになります。足と心臓の状態を確かめながら、治療・運動・足のケアを組み合わせ、自分に合う生活を目指しましょう。

医療情報に関する注意事項

本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・運動処方に代わるものではありません。薬や運動の変更は主治医・医療専門職に相談してください。突然の強い脚の痛みや冷感、動かしにくさなどがある場合は119番へ連絡してください。

参考資料

情報確認日:2026年10月1日

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この記事を書いた人

理学療法士(2021年免許取得)。心不全療養指導士(2022年取得)、心臓リハビリテーション指導士(2023年取得)。循環器領域で心臓リハビリテーションに従事し、専門的な内容を患者さんやご家族、医療職・学生にもわかりやすく解説しています。

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