「心臓の筋肉が厚いと言われました。心臓の力が強いということですか?」「肥大型心筋症でも、散歩や仕事は続けられますか?」
肥大型心筋症では、心臓の筋肉が厚くなることで、心臓が広がって血液を受け取るときや、血液を送り出すときに負担がかかることがあります。運動の範囲は、症状や検査結果をもとに一人ひとり決めます。
肥大型心筋症とは?心臓で何が起こる?
肥大型心筋症(HCM)は、主に全身へ血液を送る「左心室」の筋肉が厚くなる病気です。筋肉が硬くなり、左心室が広がりにくくなると、血液を受け取るときに心臓の中の圧力が上がり、動いたときの息切れにつながることがあります。
心臓の壁が厚くなる原因には、高血圧や大動脈弁の病気などもあります。医師は、厚くなっている場所や程度、ほかの病気の有無を調べて診断します。心臓の筋肉そのものに異常が起こる病気には、肥大型のほかにも種類があります。心筋症の主な種類と特徴もご覧ください。
閉塞性と非閉塞性はどう違う?
左心室から大動脈へ血液が出ていく通り道を「左室流出路」と呼びます。左右の心室を隔てる壁(心室中隔)が厚くなり、心臓が縮むときに僧帽弁の一部がその壁に近づくなどして、血液が流れにくくなることがあります。このタイプが閉塞性肥大型心筋症です。

血流の妨げは、安静時には目立たず、運動などで現れることもあります。非閉塞性でも、心臓が血液を受け取りにくいことや、不整脈によって症状が出る場合があります。
どんな症状がある?受診を急ぐ目安は?
症状がなく、健診の心電図などをきっかけに見つかることもあります。症状がある場合は、坂道や階段での息切れ、胸の痛みや圧迫感、動悸、めまいなどがみられます。
運動中に胸の違和感やふらつきが出たら、その場で運動を中止してください。症状が治まっても、新しく出た症状や繰り返す症状は、運動を再開する前に受診先へ相談しましょう。強い胸の痛みや圧迫感が続く、突然強く息苦しくなる、意識を失うといった場合は、119番へ連絡してください。 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」
検査と治療では何をする?
心エコーでは、心臓の壁の厚さや動き、血流の妨げを確認します。必要に応じて、運動負荷心エコーで運動時の血流を調べたり、長時間心電図で不整脈を探したりします。心臓の磁気共鳴画像検査(MRI)は、筋肉の厚くなった場所や組織の変化を詳しく確認するのに役立ちます。
左室駆出率(EF)は、左心室が一回の拍動で中の血液の何割を送り出すかを示す数値です。EFが保たれていても、血液を受け取る働きや、運動時の血流に問題がある場合があります。心エコーで測るEFの意味も参考にしてください。
治療は、症状や血流の妨げ、不整脈の種類に合わせて選びます。
- 息切れや胸の症状:脈をゆっくりにするβ遮断薬などを使います。症状のある閉塞性では、条件に応じてマバカムテンや、厚くなった中隔の一部を手術やカテーテルで治療する方法も検討します。
- 不整脈への対応:心房細動の治療と脳梗塞予防を検討します。命に関わる不整脈のリスクが高い場合は、危険な不整脈を止める植込み型除細動器を検討することもあります。
運動や心臓リハビリはできる?

病状が安定し、医療チームが運動できる状態と判断した方は、体調に合った軽めから中等度の運動に取り組めることがあります。まずは、散歩の速さや時間、避けたい負荷、どんな症状が出たら中止するかを確認しましょう。坂道の多い通勤や荷物を運ぶ仕事など、普段の動作を具体的に伝えると相談しやすくなります。
心臓リハビリで確認すること
心臓リハビリでは、運動前に症状や検査結果を確認し、運動中は息切れや胸の症状、血圧、脈の反応を見ながら負荷を調整します。理学療法士は、安静時の所見に加え、負荷をかけたときに左室流出路の血流が妨げられるか、血圧の反応や不整脈に変化があるかを、事前評価や運動負荷試験の結果から確認します。運動中に心電図を確認する理由も参考にしてください。
よくある質問
症状がなければ、激しい運動や競技を続けてもいいですか?
症状に加えて、運動時の血圧や不整脈、血流の妨げなども判断材料になります。強度の高い運動や競技を続けたい場合は、希望する種目や練習内容を伝え、肥大型心筋症に詳しい医師と、参加の可否や定期的な再評価について相談してください。
家族も検査を受けたほうがいいですか?
肥大型心筋症には遺伝が関係する場合があります。親・きょうだい・子どもは、症状がなくても、心電図や心エコーを受ける時期を循環器の医師に相談してください。遺伝学的検査が必要かどうかは、本人の検査結果や家族歴を踏まえて判断します。
まとめ
肥大型心筋症では、厚くなった筋肉が血液の受け取りや送り出しに影響し、運動時に症状が現れることがあります。診察では「血流の妨げはあるか」「普段の活動をどこまで続けられるか」「家族はいつ検査を受けるか」を確認しましょう。
医療情報に関する注意事項
この記事は一般的な医療情報です。運動の開始・再開、服薬、家族の検査については、主治医や医療チームにご相談ください。
参考資料
- 日本循環器学会・日本心不全学会.心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)
- 日本循環器学会・日本心不全学会.2025年改訂版 心不全診療ガイドライン
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会ほか.心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版、2026年6月更新)
- 日本循環器学会.マバカムテン適正使用に関するステートメント(第2版、2026年6月)
- 米国心臓協会・米国心臓病学会ほか.2024年 肥大型心筋症の管理ガイドライン
- 難病情報センター.肥大型心筋症(指定難病58)
資料確認日:2026年11月5日
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