「初めての心臓リハビリでは、どのような検査をするの?」「体力測定はきつくない?」と不安に感じる方もいるでしょう。
心臓リハビリの初回評価は、単に運動能力を測るためのものではありません。病気の状態、症状、体力、日常生活、心理面などを確認し、一人ひとりに合った目標やプログラムを考えるために行われます。
この記事では、心臓病の患者さんとご家族、新人理学療法士に向けて、初回評価の主な項目と目的をわかりやすく解説します。
心臓リハビリ全体の目的については、心臓リハビリとは?目的・内容・効果を理学療法士が解説も参考にしてください。
心臓リハビリの初回評価とは

初回評価は、心臓リハビリを安全に始め、患者さんの希望に合った目標を立てるための出発点です。
確認する内容は運動能力だけではありません。
- 心臓病の種類や治療経過
- 胸痛、息切れ、動悸などの症状
- 血圧、脈拍、酸素飽和度など
- 心電図、心エコー、血液検査などの結果
- 歩行能力、筋力、バランス
- 食事、服薬、喫煙などの生活習慣
- 不安や気分、家族の支援、仕事や住環境
- 患者さんができるようになりたいこと
すべての人に同じ検査を一度に行うわけではありません。病状、治療段階、年齢、体力、合併症などに応じて、医師や心臓リハビリのスタッフが必要な項目を選びます。
病気と治療経過を確認する医学的評価
病名・治療歴・合併症
最初に、心筋梗塞、心不全、狭心症、心臓手術後などの病名と、これまでに受けた治療を確認します。
高血圧、糖尿病、腎臓病、呼吸器疾患、脳血管疾患、整形外科疾患なども重要です。心臓以外の病気が、運動方法や評価項目に影響することがあるためです。
狭心症では原因や症状の安定性によって対応が異なります。狭心症の主なタイプと治療・運動の注意点で基本を確認できます。
症状と体調
安静時や活動時の症状を確認します。
- 胸の痛みや圧迫感
- 息切れ
- 動悸
- めまいやふらつき
- 疲れやすさ
- 足のむくみ
- 失神したことがあるか
- 最近の急な体重増加
「階段で息が切れる」「買い物の途中で休みたくなる」など、症状が現れる具体的な動作も大切な情報です。
血圧・脈拍・酸素飽和度
安静時の血圧、脈拍、心拍リズム、酸素飽和度、呼吸状態などを確認します。必要に応じて、座位・立位で血圧を測り、姿勢を変えたときのふらつきや血圧低下も確認します。
数値が一度高い、または低いというだけで判断せず、症状、服薬状況、普段の値、その後の変化を組み合わせて評価します。
検査結果と服薬内容の確認
心電図では不整脈や心筋虚血を示す変化、心エコーでは心臓の動きや弁の状態などを確認します。胸部画像、腎機能、貧血、電解質、血糖、脂質などの検査結果も、必要に応じて参考にします。
心不全で用いられる血液検査については、BNP・NT-proBNPとは?心不全との関係と数値を見るポイントで詳しく解説しています。
薬の種類、服用時刻、飲み忘れの有無も確認します。特に心拍数や血圧に影響する薬を使用している場合、運動中の反応が一般的な目安と異なることがあります。
患者さん自身の判断で、評価前に薬を中止したり服用時刻を変えたりせず、医療機関からの説明に従いましょう。
運動耐容能と身体機能の評価

「運動耐容能」とは、どの程度の身体活動を続けられるかを表す能力です。心臓だけでなく、肺、筋肉、血流などを含む全身の働きが関係します。
心肺運動負荷試験
心肺運動負荷試験(CPX)は、自転車エルゴメーターなどで段階的に運動しながら、呼吸、心電図、心拍数、血圧などを調べる検査です。
運動能力を詳しく評価し、運動処方を考えるために役立ちます。ただし、病状や施設の設備によっては実施しない場合もあります。
検査の流れや主な指標は、CPXとは?心肺運動負荷試験でわかること・受け方をご覧ください。
6分間歩行試験
6分間歩行試験では、平らな通路を6分間歩き、歩行距離と症状、脈拍、酸素飽和度などの反応を確認します。
CPXとは目的や方法が異なりますが、日常生活に近い歩行能力を把握する方法の一つです。6分間歩行試験の方法・目的・結果の見方でも詳しく紹介しています。
筋力・歩行・バランス
高齢の患者さんや入院後に体力が低下した方では、次のような項目も確認します。
- 握力
- 膝を伸ばす筋力
- 歩行速度
- 椅子からの立ち上がり
- バランス能力
- SPPBなどの総合的な身体機能評価
SPPBは、立位バランス、歩行、椅子からの立ち上がりを組み合わせた評価です。これらは運動の可否を一つの数値で決める検査ではなく、転倒への配慮や運動内容の検討に役立てます。
日常生活と生活習慣の評価
心臓リハビリの目標は、検査結果を改善することだけではありません。「自宅で生活する」「買い物に行く」「仕事に戻る」など、患者さんが望む生活を支えることも大切です。
初回評価では、次の内容を確認します。
- 食事、排泄、入浴、着替えなど
- 家事、階段、買い物、外出
- 発症前と現在の身体活動量
- 仕事や趣味
- 自宅の段差や家族の支援
- 通院方法
- 睡眠、食事、飲酒、喫煙
- 服薬や体重・血圧の自己管理
できないことだけでなく、「現在できていること」と「これから再開したいこと」を共有することが、具体的な目標につながります。
心理面と社会的背景の評価
心臓病の発症や手術後には、「動いたら再発するのではないか」「仕事に戻れるだろうか」と不安を感じることがあります。気分の落ち込みや睡眠の変化、運動への恐怖なども、心臓リハビリで共有してよい内容です。
必要に応じて質問票を使い、不安や抑うつ、生活の質、認知機能などを確認することがあります。家族の支援、介護サービス、経済面、通院のしやすさなども、継続可能な計画を考えるうえで重要です。
初回評価から目標と運動内容を考える
評価結果は、患者さんを合格・不合格に分けるためのものではありません。
医学的な安全性、症状、運動能力、筋力、生活背景、本人の希望を総合し、短期目標と長期目標を検討します。
例えば、同じ病名でも目標は異なります。
- 病棟内を安全に歩けるようになる
- 自宅の階段を落ち着いて上がる
- 休憩を取りながら買い物を再開する
- 仕事や趣味への復帰を目指す
- 自分に合う運動の強さを理解する
運動強度は、心拍数だけで一律に決めません。検査結果、症状、自覚的なきつさ、血圧や心電図の反応などを組み合わせます。詳しくは心臓リハビリの運動強度はどう決める?を参考にしてください。
初回評価を受けるときに伝えたいこと
評価時には、次の情報があると状況を共有しやすくなります。
- お薬手帳
- 家庭血圧や体重の記録
- 症状が起きる動作と時間帯
- 発症前の生活や運動習慣
- 再開したい家事、仕事、趣味
- 運動に対する不安や疑問
無理によく見せようとする必要はありません。痛み、息切れ、疲労、ふらつきなどを感じた場合は、その場でスタッフに伝えましょう。
新人理学療法士が押さえたいポイント
新人理学療法士は、測定項目を埋めることだけを目的にせず、各所見が運動や生活にどのように影響するかを整理します。
- 診断名だけでなく治療経過と現在の安定性を確認する
- 症状が出る動作、程度、回復までの時間を具体化する
- 安静時と活動時の循環反応を分けて考える
- 検査値単独で運動の可否や予後を断定しない
- 服薬による心拍数・血圧への影響を確認する
- 身体機能と患者さんの生活目標を結び付ける
- 異常所見や判断に迷う点は、医師や多職種と共有する
評価結果は開始時の記録で終わらせず、経過に応じて再評価し、目標やプログラムを見直すことが重要です。
心不全では、体調の変化と動作時の反応を結び付けて評価します。心不全患者の理学療法評価と生活への生かし方も参考にしてください。
よくある質問
初回評価は一日ですべて終わりますか?
施設や病状によって異なります。問診や基本的な測定を最初に行い、運動負荷試験や身体機能評価を別の日に実施することもあります。
体力測定は限界まで頑張る必要がありますか?
検査によって方法が異なります。症状や安全基準を確認しながら行うため、自己判断で無理をする必要はありません。スタッフの説明に従い、違和感があればすぐに伝えてください。
評価結果が悪いと運動できませんか?
一つの数値だけで決まるものではありません。病状、症状、検査結果、身体機能などを総合し、必要に応じて負荷を調整したり、治療を優先したりします。
家族も評価内容を聞いてよいですか?
本人の同意と施設の方針によりますが、家族の支援が必要な場合は、一緒に説明を受けることが役立つ場合があります。希望があればスタッフへ相談してください。
一度評価すれば内容は変わりませんか?
体調や身体機能、生活環境は変化します。心臓リハビリでは再評価を行い、その時点の状態に合わせて目標や運動内容を見直します。
まとめ
心臓リハビリの初回評価では、病気や検査結果だけでなく、症状、体力、日常生活、生活習慣、心理・社会面まで幅広く確認します。
大切なのは、数値を測ること自体ではなく、得られた情報を安全管理と個別の目標につなげることです。
不安や再開したい活動も大切な評価情報です。気になる症状や希望があれば、主治医や心臓リハビリのスタッフへ伝えましょう。
医療情報に関する注意事項
本記事は、心臓リハビリに関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断、治療、運動の許可・中止を判断するものではありません。必要な評価や運動内容は、病気の状態、治療経過、服薬、合併症などによって異なります。運動の開始や変更については、主治医や担当する医療専門職に相談してください。
参考資料
- 日本循環器学会ほか「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」
- 日本心臓リハビリテーション学会「心臓リハビリ標準プログラム」
- Brown TM, et al. “Core Components of Cardiac Rehabilitation Programs: 2024 Update.” Circulation. 2024;150–e347.
- Cartledge S, et al. “A Clinical Guide for Assessment and Prescription of Exercise and Physical Activity in Cardiac Rehabilitation.” Heart, Lung and Circulation. 2024;33:27–40.
SNSでも発信しています
心臓リハビリや心臓病について、短い動画や図解でもわかりやすく紹介しています。ぜひフォローしてご覧ください。
