「心電図が正常なら、心臓の病気はないのでしょうか?」「健診で異常と言われたら、すぐ治療が必要ですか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
心電図は、心臓の電気の動きを記録する基本的な検査です。不整脈などを調べる手がかりになりますが、心臓の病気をすべて見つけられるわけではありません。検査の役割と限界、結果の受け止め方を解説します。
心電図とは?心臓の電気信号を記録する検査
心臓は、電気信号が順番に伝わることで収縮します。心電図では、その際に生じる小さな電気の変化を、皮膚に付けた電極から波形として記録します。心臓へ電気を流す検査ではありません。
一般的な「標準12誘導心電図」は、胸と手足の計10個の電極を使い、12通りの方向から電気活動を見ます。「12誘導」は電極が12個という意味ではありません。
検査では横になって力を抜きます。記録自体は短時間で終わりますが、準備や着替えも含めた所要時間は施設や状況によって異なります。胸の痛みや動悸があるときは、その場で担当者へ伝えましょう。参考:国立循環器病研究センター「安静時心電図検査」
心電図でわかる主なこと

心拍数とリズム、電気の伝わり方
主に、次のような点を調べます。
- 心拍数:心臓が速く、または遅く打っていないか
- リズム:拍動の間隔が不規則になったり、予定より早い拍動が出たりしていないか
- 電気の伝わり方:信号が途中で遅れたり、伝わりにくくなったりしていないか
心房細動、期外収縮、房室ブロックなどの診断に役立ちます。ただし、短い記録中に出現しない不整脈もあります。参考:不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
心房細動を指摘された方は、心房細動の症状と治療の基本も参考にしてください。
心筋の血流不足や負担を疑う変化
心臓の筋肉への血流が不足する「心筋虚血」や心筋梗塞では、波形に変化が出ることがあります。心臓の壁が厚くなる心肥大、薬や血液中のカリウムなどの影響を疑う手がかりも得られます。
ただし、同じような波形変化が別の理由で起こることもあります。心電図だけで原因や重症度を確定せず、症状、診察、血液検査、画像検査などと組み合わせます。参考:不整脈の診断・リスク評価ガイドライン
波形の山は何を表している?
代表的な波形では、小さな「P波」が心房に電気が広がる過程、鋭い「QRS波」が心室に電気が広がる過程、その後の「T波」が心室の電気的な回復過程を表します。
山の高さだけで心臓の強さはわかりません。波形は記録する方向でも変わるため、図の形との違いだけで自己診断しないことが大切です。
心電図だけではわからないこと
正常でも病気を否定できない場合がある
安静時心電図は、主に「記録した時間の状態」を示します。発作がないときの不整脈や狭心症は、検査で捉えられない場合があります。症状が続くなら、以前の心電図が正常でも相談してください。参考:国立病院機構大阪医療センター「虚血性心疾患」
狭心症の症状と検査の考え方も確認できます。症状を再現しようと、自宅で階段昇降などを試すことは避けましょう。
心電図検査の種類と使い分け
症状が出る頻度や場面に応じて、検査を選びます。
- 安静時12誘導心電図:横になった状態で、複数の方向から波形を調べる
- ホルター心電図:小型の機器を身に着け、日常生活中の心電図を通常24時間など記録する
- より長期間の心電図・イベント記録:たまに起こる症状などを捉えるため、機器や記録期間を選ぶ
ホルター検査では、症状が出た時刻や行動の記録が、心電図との照合に役立ちます。入浴や運動の制限は機器によって異なるため、検査施設の説明に従ってください。参考:国立循環器病研究センター「ホルター心電図」
異常と言われたときに確認したいこと

健診の「心電図異常」は、そのまま重い病気や治療の必要性を意味するものではありません。所見の種類、症状、過去の記録、持病によって対応が変わります。自動解析の表示も、医師による確認が必要です。
受診の際は、次の情報を用意すると相談しやすくなります。
- 検査結果と、以前の心電図や健診結果
- 動悸・胸痛・めまいが出た時刻、続いた時間、そのときの行動
- 服薬内容と最近の変更、失神したことがあるか
「どの所見があるのか」「追加検査や再検査は必要か」「日常生活で注意することはあるか」を確認しましょう。精密検査の指示がある場合は、症状がなくても受診してください。
心臓リハビリでは心電図をどう使う?
心リハでは、必要に応じてモニター心電図で運動中の心拍数やリズムなどを観察します。心電図だけで運動の可否を決めず、血圧、息切れ、胸の症状、体力、治療内容を合わせて負荷を調整します。参考:心血管疾患のリハビリテーションガイドライン
新人理学療法士は、普段の波形との違いや発生時の負荷量を確認し、症状と合わせて医師へ共有します。体の動きや電極の接触不良による乱れもありますが、「ノイズだろう」と決めつけず、まず患者さんの状態を確かめます。
胸痛、強い息切れ、めまいなどが出たら、表示が正常そうでも運動をやめてスタッフへ伝えてください。運動を休む症状と中止の目安も参考になります。
よくある質問
心電図は痛い検査ですか?
通常の安静時心電図は、針を刺したり電気を流したりしません。電極の吸着や粘着で皮膚に刺激を感じることはあるため、痛みやかぶれがあれば伝えてください。
心電図が正常なら、胸の痛みは放置してよいですか?
放置しないでください。一度の心電図だけで、緊急性のある病気をすべて否定することはできません。強い胸痛、冷や汗、強い息苦しさ、失神がある場合は119番へ連絡してください。
スマートウォッチの通知だけで診断できますか?
通知だけでは確定診断になりません。脈を光で測る機能と心電図を記録する機能は異なり、機器によってできることも違います。記録を保存して医療機関へ相談してください。強い症状があるときは記録より受診を優先します。参考:携帯型・装着型心電計の適切使用に関するステートメント
心電図に異常があると運動は禁止ですか?
すべての運動が禁止になるわけではありません。所見の種類、症状、病状の安定性によって判断します。自己判断で運動量を増減せず、主治医や心リハ担当者に確認しましょう。
まとめ
心電図は心臓の電気活動を記録し、心拍数・リズム・電気の伝わり方や、心筋の異常を疑う変化を調べます。正常・異常の一言だけで判断せず、症状やほかの検査結果と合わせて説明を受けることが大切です。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・運動処方に代わるものではありません。検査結果の解釈や薬・運動の変更は医療専門職に相談してください。強い胸痛や呼吸困難、失神などがある場合は、過去の検査結果にかかわらず救急対応を優先してください。
参考資料
資料・公開記事の確認日:2026年10月8日
- 国立循環器病研究センター:安静時心電図検査
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会:2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
- 国立病院機構大阪医療センター:虚血性心疾患(循環器科)
- 国立循環器病研究センター:ホルター心電図(長時間心電図)
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
- 日本不整脈心電学会・日本循環器学会:2025年 携帯型/装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント
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