「心臓病があるけれど、玄関前の雪くらいなら自分で片づけてもよい?」。雪の多い地域では、雪かきは暮らしに欠かせない作業です。
ただし、雪かきは見た目以上に心臓へ負担がかかることがあります。心臓病がある方は自己判断で始めず、まず主治医に相談し、家族や除雪サービスに任せる方法を優先して考えましょう。普段の散歩ができることと、雪かきができることは別に判断します。
雪かきで心臓に負担がかかる理由

寒さと腕の力仕事が重なる
寒い場所では血管が縮み、血圧が上がりやすくなります。そこに、雪をすくう・持ち上げる・投げる動作が加わると、心臓が必要とする酸素も増えます。力むときの息こらえも、血圧を大きく変動させる要因です。米国心臓協会の注意喚起
健康でも運動習慣のない男性10人を対象にした小規模研究では、重く湿った雪の雪かきで、心拍数が最大運動時に近づきました。患者さん全員に同じ反応が起こるとはいえませんが、軽い家事のつもりで始めないことが大切です。
雪の重さや作業範囲で負担が変わる
湿った雪、凍った雪、除雪車が残した固い雪は、強い力が必要です。短時間でも、重い雪を一度に持ち上げれば負担は増えます。
カナダの観察研究では、降雪量と、その翌日の男性の心筋梗塞による入院・死亡との関連が報告されました。ただし、実際に雪かきをしたかは調べておらず、因果関係を証明した研究ではありません。女性なら安全という意味でもありません。
雪かきの前に主治医へ相談したいこと
狭心症や心筋梗塞の既往、心不全、弁膜症、不整脈などがある方は、病状と体力に応じた判断が必要です。特に次の場合は、雪かきを始めず医療機関に確認してください。
- 最近、心筋梗塞や心不全で入院した、手術・治療を受けた
- 胸の違和感、普段より強い息切れ、むくみ、急な体重増加がある
- 動悸やめまいがある、血圧が指示された範囲を外れている
- 重い物を持つことや、強く押す・引く動作を制限されている
胸の骨を切る手術後は、息切れだけでなく傷や骨の回復も確認します。心臓手術後の回復と胸の傷への配慮も参考にしてください。
相談時には「雪かきをしてよいですか」だけでなく、雪の重さ、広さ、道具、作業時間、手伝える人の有無を伝えましょう。日常の活動再開については、退院後の家事・階段・外出の目安で解説しています。
任せる準備と、許可された場合の工夫

まず、家族・近隣の支援、民間の除雪業者を検討しましょう。自治体や社会福祉協議会に相談できる場合もあります。利用条件や費用は地域で異なるため、雪が積もる前に確認しておくと安心です。
以下は、主治医が雪かきを認めた場合の負担を減らす工夫です。実施の許可や安全の保証にはなりません。
- 防寒着、帽子、手袋、滑りにくい靴を用意し、室内で軽く体を動かす
- 強い寒さや悪天候、食後すぐ・飲酒後の作業を避ける
- 小さく軽い道具で少量ずつ扱い、持ち上げて投げる動作を減らす
- 押す動作でも固い雪に力を込めず、息を止めない
- 疲れる前にこまめに休み、一度に終わらせようとしない
- 一人きりで行わず、携帯電話を持ち、周囲に声をかける
「会話ができる」「脈がそれほど速くない」だけでは、負担を判断できません。薬の影響で脈が上がりにくい方もいます。屋根の雪下ろしは転落の危険もあり、専門業者などに依頼しましょう。
新人理学療法士が確認したいポイント
歩行能力だけで判断せず、寒冷環境、上肢の力仕事、息こらえ、雪質、作業量、支援者を確認します。運動負荷試験の結果や症状、血圧反応を医師と共有し、「任せる作業」と「本人が行える範囲」を具体化しましょう。心リハガイドライン
胸痛や息苦しさが出たら中止する
胸の痛み・圧迫感、いつもと違う息切れ、動悸を伴うめまい、冷や汗、吐き気が出たら、すぐに作業を中止します。無理に歩いて戻ろうとせず、転倒や寒さを避けられる場所で楽な姿勢を取り、助けを求めてください。
**突然の強い胸痛、胸の圧迫感が続く場合、急な強い息苦しさ、意識の異常があれば119番へ連絡します。**自分で運転して受診しないでください。症状が軽くなっても自己判断で作業を再開せず、医療機関に相談しましょう。厚生労働省の救急受診情報
詳しくは、運動を休むべき症状と中止の目安をご覧ください。
よくある質問
何分までなら雪かきをしてよいですか?
全員に共通する時間はありません。雪の重さや病状で負担が変わるため、「5分なら安全」などとは決められません。作業内容を伝え、実施の可否から相談してください。
除雪機なら心臓への負担はありませんか?
除雪機でも歩行や操作に力を使います。冠動脈の病気がある男性を含む研究では、機械の使用で心拍数などが必ず下がるとは限りませんでした。機械なら大丈夫と判断せず、操作の可否も確認しましょう。
まとめ
心臓病がある方の雪かきは、主治医に相談し、まず人に任せる方法を考えましょう。許可があっても寒さや雪質、当日の体調で負担は変わります。無理をせず、胸痛や息苦しさがあれば中止し、強い症状では救急対応を優先してください。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・作業の許可に代わるものではありません。主治医や心臓リハビリ担当者の指示を優先してください。
参考資料
資料確認日:2026年11月1日
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会ほか:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2026年6月20日更新)
- American Heart Association:Cold Weather and Cardiovascular Disease
- American Heart Association:Shoveling snow can be dangerous in extreme cold(2026年2月5日)
- Franklin BA, et al. Cardiac demands of heavy snow shoveling. JAMA. 1995;273:880–882.
- Auger N, et al. Association between quantity and duration of snowfall and risk of myocardial infarction. CMAJ. 2017;189–E242.
- Sheldahl LM, et al. Snow blowing and shoveling in normal and asymptomatic coronary artery diseased men. Int J Cardiol. 1994;43:233–238.
- 厚生労働省:こんな時は迷わず119へ
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