「退院時に『3メッツくらいの活動を』と言われたけれど、何をすればいいの?」
「同じ散歩でも、疲れる日と楽な日があるのはなぜ?」
METs(メッツ)は、日常生活や運動の強さを知るための目安です。ただし、数字だけで自分に合う運動や安全性が決まるわけではありません。心臓リハビリでの使い方を、身近な活動から見ていきましょう。
METs(メッツ)とは?
METsは、静かに座っているときを1として、何倍のエネルギーを使う活動かを表す単位です。
例えば3メッツは、安静に座っているときの約3倍のエネルギーを使う活動を意味します。「心臓に3倍の負担がかかる」「脈拍が3倍になる」という意味ではありません。
散歩のような運動だけでなく、掃除や買い物などの生活動作にもメッツの目安があります。活動を共通の物差しで比べられることが特徴です。厚生労働省の身体活動・運動ガイドでも、活動の強度を示す指標として使われています。
日常生活の活動は何メッツ?

代表的な目安を紹介します。
| 活動の例 | メッツの目安 |
|---|---|
| 静かに座る | 1 |
| 家の中などを非常にゆっくり歩く | 2 |
| 平地を普通に歩く(分速約67m) | 3 |
| 掃除機をかける | 3.3 |
| 平地をほどほどの速さで歩く(分速75~85m) | 3.5 |
| 階段をゆっくり上る | 4 |
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」生活活動のメッツ表などを基に整理。
これらは代表値であり、その活動を勧める一覧ではありません。歩く速さ、坂道、荷物の重さ、作業の方法などによって、実際の強度は変わります。
また、同じ3メッツの活動でも、体力が低下している方には負担が大きく感じられることがあります。活動の数値と、自分が感じるきつさを分けて考えることが大切です。
心臓リハビリではどう使う?
生活に戻るための相談に役立つ
心臓リハビリでは、検査や運動中の反応を確認しながら、運動や生活動作の進め方を相談します。
メッツは「買い物に行きたい」「掃除を再開したい」といった希望を、具体的な活動に結び付ける手がかりになります。
ただし、心筋梗塞後、心不全、心臓手術後などでは、病状や回復段階によって注意点が異なります。「心臓病なら一律に何メッツまで」とは決められません。心血管疾患のリハビリテーションガイドラインでも、評価に基づく個別の運動処方が重視されています。
数字と一緒に体の反応を見る
運動強度の調整では、次の情報を組み合わせます。
- 胸の違和感、息切れ、疲労などの症状
- 心拍数や血圧、必要に応じて心電図
- 運動負荷試験の結果
- 自分で感じる運動のきつさ
きつさを表す「Borg指数」や、会話が続けられるかも参考になります。ただし、それだけで安全を判断せず、担当者から示された目安と併せて使いましょう。
心拍数は薬の影響を受けるため、年齢だけで計算した目標心拍数が合わない場合もあります。
メッツと「メッツ・時」はどう違う?
メッツが活動の「強さ」を表すのに対し、メッツ・時は、強さに時間を掛けた「活動量」です。
計算式は次のとおりです。
メッツ・時=メッツ×活動時間(時間)
例えば3メッツの活動を20分行うと、3×20÷60=1メッツ・時です。これは計算例であり、20分の運動を一律に勧めるものではありません。
また、同じ活動量になるからといって、低い強度の長時間運動を、強い短時間運動に置き換えてよいわけではありません。心臓病のある方は、強度と時間をそれぞれ確認してください。
厚生労働省が示す一般的な健康づくりの推奨量も、そのまま治療中の目標にせず、病状に合わせて調整します。
自宅で活用するときのポイント

まず担当の医師や理学療法士に、次の点を聞いておきましょう。
- 行ってよい活動と、控える活動
- 1回の時間、休憩の取り方、きつさの目安
- 運動を休む日や、中止する症状
活動の内容・時間・息切れ・疲れの残り方を簡単に記録すると、次の相談に役立ちます。数字を達成するために無理を重ねる必要はありません。
胸痛、強い息切れ、めまい、冷汗などが出たら活動を中止してください。強い胸痛や安静でも続く呼吸困難などがある場合は、119番を含む緊急対応が必要です。
いつもより息切れやむくみが増えた、体重が急に増えた場合も、運動量を増やさず医療機関へ相談しましょう。2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでも、病状の評価と個別の運動処方が重視されています。
よくある質問
3メッツ以下なら安全ですか?
一律には判断できません。病状によっては軽い活動でも調整が必要です。低いメッツでも、症状や担当者の指示を優先してください。
家事も活動量に含まれますか?
含まれます。ただし、歩行と家事では動き方や負担のかかり方が異なります。家事をすべて運動の代わりにできるとは限りません。
検査の「最高メッツ」が普段の運動目標ですか?
違います。検査で到達した能力を表す数値と、日常的に続ける運動強度は区別します。検査結果を見て、自分で上限を設定しないようにしましょう。
まとめ
メッツは、歩行や家事などの活動の強さを理解するための便利な目安です。活動量を見るときは、時間も合わせて考えます。
大切なのは、メッツの数字に体調や検査結果を重ねて、自分に合う活動を選ぶことです。「何メッツなら何ができる?」を、心臓リハビリの担当者と相談してみましょう。
医療情報に関する注意事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や運動処方に代わるものではありません。病状、手術後の制限、服薬などによって適切な活動は異なります。主治医や心臓リハビリ担当者の指示を優先してください。
参考資料
- 厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf - 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf - 日本循環器学会・日本心不全学会『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf
情報確認日:2026年10月17日
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