心エコーのEFとは?数値の意味とHFpEF・HFrEFを解説

心エコーのEFとHFpEF・HFrEFを解説するタイトル、心臓のシンボル、割合を表す円グラフ、検査結果票

「心エコーでEFが40%と言われたけれど、心臓が40%しか働いていないの?」「EFは正常なのに、なぜ心不全と言われたの?」――検査結果を聞いて、戸惑う方もいるでしょう。

EFは心臓の働きを知る大切な指標ですが、心臓全体の健康状態を表す点数ではありません。この記事では、EFの意味と、HFpEF・HFrEFという心不全の分類、結果を見るときのポイントを解説します。

目次

心エコーのEFとは?

左心室から送り出す血液の「割合」

EFは「駆出率(くしゅつりつ)」のことです。心エコーで一般に説明されるEFは、全身へ血液を送る左心室の駆出率を指し、検査票にはLVEFと書かれることもあります。

左心室は、広がって血液を受け取り、縮んで血液を送り出します。EFは、左心室が最も広がったときに入っている血液のうち、1回の収縮で何%を送り出したかを示します。

EF(%)=1回の収縮で送り出した血液量÷収縮する直前の左心室の血液量×100

10個のしずくで表した血液のうち6個を送り出し、4個が残る様子を示すEF60%の模式図

たとえば、左心室に100mLの血液が入り、1回の収縮で60mLを送り出すと、EFは60%です。残りの40mLがあること自体は異常ではなく、健康な心臓も毎回すべての血液を送り出すわけではありません。米国心臓協会のEF解説

EFは心臓全体の「働いている割合」ではない

EF40%は「心臓の60%が止まっている」「寿命が40%になった」という意味ではありません。また、EF60%なら何mL送れるかは、もとの左心室の血液量によって変わります。

EFが表すのはあくまで割合です。実際に送り出す血液量、1分間の心拍数、血液を受け取る働きなども、体に血液を届けるうえで重要になります。

EFの正常値はどのくらい?

米国心臓協会の一般向け解説では、正常なEFの目安を55〜70%としています。ただし、基準範囲は測定方法や施設などで異なり、「高いほどよい」という数値でもありません。米国心臓協会のEF解説

ここで気をつけたいのが、正常値の目安と、心不全を分類するための区切りは別だということです。後述する「EF50%以上」はHFpEFの分類に使う値であり、その範囲の人が全員正常、あるいは全員心不全という意味ではありません。

HFrEF・HFpEF・HFmrEFの違い

心不全では、EFの値が治療方針を考える手がかりになります。2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでは、初回評価時の左室EFを次のように分類しています。

分類左室EF名称の意味
HFrEF(ヘフレフ)40%以下EFが低下した心不全
HFmrEF41〜49%EFが軽度低下した心不全
HFpEF(ヘフペフ)50%以上EFが保たれた心不全

※2025年改訂版 心不全診療ガイドラインに基づく分類です。数値だけで心不全を診断したり、重症度を順位づけたりする表ではありません。

HFrEFは「送り出す割合」が低下した心不全

HFrEFでは、左心室が十分に縮めず、送り出す血液の割合が低下しています。心筋梗塞や心筋症など、背景にある病気も確認して治療します。縮む働きだけでなく、広がって血液を受け取る働きも低下している場合があります。

HFpEFはEFが保たれていても起こる心不全

HFpEFでは、EFが50%以上あっても心不全の症状が現れます。代表的な仕組みは、左心室が硬くなるなどして十分に広がりにくくなり、血液を受け取る際の圧力が高くなることです。肺側に負担がかかり、息切れなどにつながります。

ただし、HFpEFの仕組みは一つではありません。「縮む力は完全に正常で、広がる力だけが悪い」と単純に分けられない場合もあります。EFが保たれていることと、心臓の働き全体が正常であることは同じではないのです。米国心臓協会「心不全の種類」

HFmrEFは「軽い心不全」という意味ではない

HFmrEFの「軽度低下」はEFの低下の程度を表す言葉です。息切れやむくみが軽い、治療が不要という意味ではありません。症状や原因、これまでのEFの推移によって、必要な対応は異なります。

心不全そのものの症状や原因は、心不全の症状・原因・治療の基本も参考にしてください。

EFだけで心不全を判断できない理由

心臓のシンボルの周囲に心エコーの結果票、採血検査、体調記録帳、体重計を配置した総合評価のイメージ

心エコーではEF以外も確認する

心エコーは超音波を使い、心臓の形や動きを調べる検査です。通常の胸から行う検査では、胸にゼリーを塗り、小さな器具を当てて観察します。

医師はEFに加え、次のような情報を確認します。

  • 心臓の部屋の大きさや壁の厚さ
  • 心臓の壁がどのように動いているか
  • 弁の狭まりや血液の逆流がないか
  • 血液を受け取る働きや、心臓内の圧力を推測する指標
  • 右心室など、左心室以外の状態

そのため、EFが同じでも病状が同じとは限りません。EFが低くても症状がまだない段階もあり、反対にEFが保たれていても詳しい評価が必要なことがあります。日本循環器学会・心エコーのガイドライン

検査で弁の狭まりや逆流を指摘された方は、心臓弁膜症の種類と検査の基本も参考にしてください。

症状やBNP・NT-proBNPも合わせて見る

心不全の診断では、息切れやむくみ、診察所見、血液検査などを組み合わせます。特にHFpEFは、EF50%以上という条件だけで診断するものではなく、心臓の構造や働きの異常、血液を受け取る際の圧力上昇を示す所見などを確認します。

採血のBNP・NT-proBNPは心臓への負担を知る手がかりですが、EFとは別の指標です。採血結果の読み方は、BNP・NT-proBNPの意味と数値を見るポイントで紹介しています。

前回のEFと比べるときの注意点

数%の変化だけで悪化と決めつけない

EFは、画像の見え方や測定方法に加え、検査時の血圧や心臓に戻る血液量などの影響を受けます。前回60%、今回57%だったとしても、それだけで病状が悪くなったとは断定できません。日本循環器学会・心エコーのガイドライン

診察では「意味のある変化ですか」「症状やほかの検査も変わっていますか」と確認しましょう。過去の検査票と、息切れ・体重・活動量の記録を持参すると相談しやすくなります。

EFが改善しても、薬を自己判断でやめない

治療によってEFが改善することがあります。2025年のガイドラインでは、初回40%以下から10ポイント以上改善し、40%を超えた心不全をHFimpEFと分類しています。たとえば30%から45%への改善は15ポイントの上昇です。2025年改訂版 心不全診療ガイドライン

ただし、EFの改善だけで「治療が不要になった」とは判断できません。改善した拡張型心筋症の患者さんを対象とした研究では、治療薬を中止した後に再び悪化した例が報告されています。原因の病気や経過を踏まえ、薬の継続・調整は主治医と相談してください。TRED-HF試験

EFが低いと運動はできない?

EFが低いことだけを理由に、すべての運動が禁止になるわけではありません。一方、EFが保たれていても、心不全が悪化しているときに無理な運動はできません。

運動の開始時期や強さは、病状の安定性、症状、血圧・脈拍、不整脈、体力などから個別に決めます。運動中の呼吸や心電図を調べる心肺運動負荷試験などが役立つ場合もあります。心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン

「EFを上げるために頑張る」と運動量を増やさず、主治医やリハビリの担当者に確認しましょう。詳しくは、心不全の運動療法と注意点をご覧ください。

EFだけでは実際の運動能力を判断できません。運動中の心臓・肺・筋肉の反応を評価する検査については、CPXとは?心肺運動負荷試験でわかることを参考にしてください。

新人理学療法士が押さえたい視点

EFは、運動の安全性や患者さんの歩ける距離を単独で決める指標ではありません。検査日と経過、当日の症状・バイタルサイン、治療内容、医師の指示を確認し、活動時の反応と合わせて考えます。

患者さんには「EFが低いから何もできない」「EFが正常だから問題ない」と説明せず、その人に合う活動量を一緒に確認する姿勢が大切です。

検査の数字より、今の症状を優先したいとき

息切れが増えた、横になると苦しい、むくみや短期間の体重増加がある場合は、以前のEFがよくても次回検査まで待たず受診先へ相談してください。観察のポイントは、心不全が悪化するサインと受診の目安で解説しています。

突然の強い息苦しさ、強い胸痛、意識の異常があるときは、EFの値にかかわらず119番への連絡など緊急の対応を優先します。

よくある質問

EF60%なら心不全ではありませんか?

EFが保たれていても、HFpEFの可能性はあります。ただし、EF60%だけでHFpEFとも診断できません。症状やほかの検査所見と合わせて判断します。

EFが低いほど、必ず息切れも強くなりますか?

必ずしも一致しません。体にたまった水分、肺や腎臓の状態、貧血、筋力なども活動時のつらさに関係します。EFだけで他の人と症状を比べないことが大切です。

EFは改善することがありますか?

原因や治療への反応によっては改善しますが、すべての方で同じように上がるわけではありません。EFの上昇だけでなく、症状や生活のしやすさ、再入院を防ぐことも治療の大切な目標です。

心エコーは何カ月ごとに受ければよいですか?

病気の種類、症状、治療の変更などによって異なります。必要な時期は主治医に確認しましょう。症状が変化したときは、予定していた検査日を待たず相談してください。

まとめ

EFは、左心室に入った血液のうち、1回の収縮で送り出す割合です。HFrEFは40%以下、HFmrEFは41〜49%、HFpEFは50%以上を目安に分類しますが、診断や重症度、運動の可否はEFだけでは決まりません。過去の値と今の症状、ほかの検査結果を合わせて、主治医やリハビリの担当者と確認しましょう。

医療情報に関する注意事項

この記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療・運動の指示に代わるものではありません。検査結果の解釈、薬の調整、運動の内容は、主治医や医療専門職に確認してください。緊急の症状がある場合は、検査結果の確認より受診・救急要請を優先してください。

参考資料

確認日:2026年9月19日

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この記事を書いた人

理学療法士(2021年免許取得)。心不全療養指導士(2022年取得)、心臓リハビリテーション指導士(2023年取得)。循環器領域で心臓リハビリテーションに従事し、専門的な内容を患者さんやご家族、医療職・学生にもわかりやすく解説しています。

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