「血圧は上が130、下が80ですね」と言われても、二つの数字が何を表しているのか、迷うことはありませんか。
血圧の「上」と「下」は、どちらも動脈の中の圧力です。心臓が縮んで血液を送り出すときと、広がって次の血液を受け取るときでは、圧力が変わります。
それぞれの意味と、家庭で数値を見るときのポイントを確認しましょう。
血圧の上と下は、動脈の圧力を表す
血圧とは、血液が血管の壁を内側から押す圧力です。腕で測る血圧は、通常、動脈の圧力を示します。
上の血圧は「収縮期血圧」
心臓、特に全身へ血液を送る左心室が縮むと、血液が大動脈へ送り出され、動脈の圧力が高まります。
このときの最も高い値が「収縮期血圧」です。「最高血圧」「上の血圧」とも呼ばれます。
下の血圧は「拡張期血圧」
左心室が広がり、次に送り出す血液を受け取る間は、動脈の圧力が下がります。このときの最も低い値が「拡張期血圧」です。「最低血圧」「下の血圧」とも呼ばれます。
心臓が広がっている間も、伸びた大動脈などが元へ戻る弾力によって血液が先へ送られます。そのため、血圧はゼロにならず、血流も続きます。下の血圧は、静脈の圧力ではありません。
これらの定義は、国立循環器病研究センター「高血圧」でも説明されています。

「120/80」という血圧の読み方
「120/80mmHg」なら、上が120、下が80です。「mmHg」は圧力の単位で、「ミリメートル水銀柱」と読みます。
上と下の差は「脈圧」と呼ばれ、この例では40mmHgです。ただし、差だけで病気を判断することはできません。
血圧は心臓から送り出す血液量、血管のしなやかさ、血液の流れにくさなどに左右されます。「上は心臓の力だけ」「下は血管の硬さだけ」を表す数字ではありません。
また、血圧が普段どおりでも、心臓の働き全体が正常とは限りません。心機能の検査については、心エコーのEFが表す意味も参考にしてください。
上と下、どちらが高いと問題になる?
上と下の両方を確認します。片方だけ高い場合も、相談の対象です。
日本高血圧学会の2025年ガイドラインでは、高血圧の診断基準は次のとおりです。
| 測る場所 | 上の血圧 | 下の血圧 |
|---|---|---|
| 診察室 | 140mmHg以上 | 90mmHg以上 |
| 家庭 | 135mmHg以上 | 85mmHg以上 |
いずれも「上または下」のどちらかが基準に達する場合です。ただし、1回の測定だけで高血圧と決めるものではなく、繰り返し測った記録などから医師が判断します。
例えば、家庭で上が145、下が75という状態が続く場合も、「下が低めだから問題ない」とは言えません。反対に、上が基準未満でも、下が高い状態が続けば確認が必要です。
診断基準と治療目標は違う
2025年ガイドラインの基本的な降圧目標は、診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満です。
これは、高血圧と診断するための境界とは異なります。また、心臓病の種類、立ちくらみなどの症状、治療への耐えやすさを踏まえ、実際の目標や下げ方を調整します。自己判断で薬を増減しないでください。
出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」、「高血圧の日」について
家庭では、条件をそろえて測る

血圧は、運動、緊張、寒さ、食事、薬などでも変わります。1回の数字に一喜一憂するより、同じ条件で測った数日間の傾向を見ましょう。
家庭では、上腕にカフを巻く血圧計を使い、次の点を意識します。
- 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前に測る
- 夜は就寝前に測る
- 椅子に座って1〜2分安静にし、脚を組まない
- 腕を支え、カフを心臓の高さに合わせる
- 測定中は話さず、原則として毎回2回測り、両方を記録する
服薬や測定について個別の指示がある場合は、その指示に従ってください。低い値が出るまで何度も測り直したり、よい値だけ選んだりせず、測定結果を診察に持参しましょう。
測定方法の参考:日本高血圧学会「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子」
心臓病や心リハでは「普段との違い」も大切
心臓病の治療中は、血圧に加えて、めまい、息切れ、胸の症状、体重などを一緒に確認します。心不全の薬には血圧を下げる作用を持つものもあり、低めの値だけで薬が不要とは判断できません。
記録には測定時刻、上と下の値、脈拍、症状を残すと役立ちます。息切れやむくみも気になる場合は、心不全が悪化するサインと受診の目安を確認してください。
運動中は上の血圧が上がることがありますが、許容できる範囲は病状によって異なります。高血圧の診断基準を、そのまま運動中止の基準には使いません。具体的な考え方は、心臓リハビリの中止基準で解説しています。
新人理学療法士も、上と下の両方、測定条件、薬、症状、運動前後の変化を確認し、個別指示と合わせて判断しましょう。
よくある質問
下の血圧は、低いほどよいですか?
低いほどよいとは限りません。普段より低く、めまいやふらつきがある場合は相談してください。症状や心臓病の状態を合わせて判断します。
上と下の差が大きいと、動脈硬化ですか?
血管のしなやかさの低下が関係することはありますが、年齢や弁の病気など、ほかの要因もあります。差だけでは診断できません。
血圧が普段どおりなら、胸が苦しくても大丈夫ですか?
血圧が普段どおりでも、緊急の対応が必要なことがあります。強い胸痛、突然の強い息苦しさ、意識の異常がある場合は、測り直しを優先せず119番へ連絡してください。
まとめ
上の血圧は心臓が縮んで血液を送り出すとき、下の血圧は心臓が広がるときの動脈の圧力です。両方の値と普段からの変化を確認し、症状や記録と合わせて主治医・心リハの担当者に相談しましょう。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療、運動の指示に代わるものではありません。血圧の目標、薬の調整、運動の可否は、主治医や医療専門職に確認してください。
参考資料
資料確認日:2026年10月16日
- 国立循環器病研究センター:高血圧
- 日本高血圧学会:高血圧管理・治療ガイドライン2025
- 日本高血圧学会:「高血圧の日」について(2025年ガイドラインの降圧目標を掲載)
- 日本高血圧学会:一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子(家庭血圧の測定方法を参照)
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会ほか:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2026年6月20日更新)
SNSでも発信しています
心臓リハビリや心臓病について、短い動画や図解でもわかりやすく紹介しています。ぜひフォローしてご覧ください。
