「歩いたり自転車をこいだりするだけなのに、なぜ心電図を付けるの?」「付けているということは、運動が危険なのでしょうか?」と気になる方もいるでしょう。
心臓リハビリで運動中に心電図を確認するのは、心臓の反応を把握し、その人に合った運動を考えるためです。装着していること自体が、重い病状を意味するわけではありません。何を見ているのか、患者さん自身が伝えたいことと合わせて解説します。
心電図は心臓の電気の動きを記録するもの
心臓は、電気信号が伝わることで拍動します。心電図は、皮膚に付けた電極からその小さな電気の変化を受け取り、波形として記録するものです。心臓へ電気を流す検査ではありません。
心リハでは、小型の送信機などを使い、動いている間の波形をモニターで観察することがあります。装着方法や電極の数は機器によって異なります。基本的な仕組みや検査の種類は、心電図でわかることと検査の違いも参考にしてください。
運動中の心電図で確認すること

安静時と運動中では、体が必要とする酸素や血液の量が変わります。安静時の記録だけではわかりにくい変化が、運動によって現れる場合があります。
心拍数が運動にどう反応するか
運動すると、通常は心拍数が上がります。スタッフは、運動の強さに対して上がり方が適切か、急に変化していないか、終了後にどう戻るかを確認します。
ただし、心拍数を抑えるβ遮断薬などの薬や、ペースメーカの設定によって反応は異なります。「心拍数が低いから余裕がある」とは限りません。年齢から計算した数字だけで目標を決めず、個別の指示を確認しましょう。
脈のリズムに変化がないか
「不整脈」は、心臓が打つ速さやリズムなどに異常がある状態です。予定より早い拍動が出る「期外収縮」などが、運動で増えたり続いたりしていないかを見ます。
不整脈が見つかったら、すべての運動が禁止になるわけではありません。種類、続く時間、症状、血圧、心臓の病気を合わせて、医師やスタッフが対応を判断します。
心筋の血流不足を疑う変化がないか
心臓の筋肉に必要な酸素が十分届かない状態を「心筋虚血」といいます。運動中に、心電図の波形の一部である「ST部分」などに変化が現れることがあります。胸痛を伴わない場合もあるため、症状と波形の両方を確認します。
ただし、波形の変化だけで心筋虚血を確定することはできません。普段の心電図や記録条件によって判断しにくい場合もあり、必要に応じて12誘導心電図やほかの検査で評価します。
これらの観察と運動の調整は、心血管疾患のリハビリテーションガイドラインに基づいて行います。
心電図だけで運動の安全性は判断できない

心電図は大切な情報ですが、心臓のポンプ機能や体全体の状態をすべて示すものではありません。スタッフは、次の情報を組み合わせます。
- 血圧と心拍数の変化
- 胸の痛み、動悸、めまいなどの症状
- 息切れ、脚の疲れ、顔色や冷や汗
- 必要に応じた酸素飽和度
- 運動後の回復と当日の体調
患者さんが感じる「いつもと違う」は、画面からはわからない重要な情報です。表示が正常そうでも、つらさや違和感は我慢せず伝えてください。
運動の強さは、心拍数のほかに、きつさを数字で表す「Borg指数」なども用いて決めます。心拍数やきつさを使った運動強度の決め方を知ると、担当者の説明を理解しやすくなります。
運動前・運動中・運動後を比べることが大切
運動前の波形や体調を確認しておくと、運動による変化がわかりやすくなります。胸の違和感、普段より強い息切れ、薬の変更や飲み忘れなどは、開始前に伝えましょう。薬は自己判断で中止しないでください。
運動中は、どの速さ・負荷で変化が出たかを確認します。終了後も心拍数や血圧、症状の回復を見ます。問題なく終了する際には、担当者の指示に沿って徐々に運動を弱めます。
一方、胸痛や強いめまいなどが出た場合は、整理運動を続けず中止し、すぐスタッフへ知らせてください。詳しい症状の目安は、運動を休む症状と中止の目安で確認できます。
検査として運動への反応を詳しく調べる方法に、心肺運動負荷試験があります。心肺運動負荷試験でわかることと検査の流れでは、心電図に加えて呼吸なども測る理由を紹介しています。
新人理学療法士が押さえたい観察のポイント
画面の数字だけでなく、患者さんの状態と変化の経過を確認しましょう。
- 開始前の波形、診断、服薬、医師の指示を把握する
- 変化した時刻、負荷量、症状、血圧を記録する
- 体の動きや電極の接触不良によるノイズも確認する
- 異常が疑われたら、施設の手順に沿って中止・報告する
波形が乱れたときに「ノイズだろう」と決めつけず、まず意識や症状などを確認します。緊急性が疑われる場合は機器の調整より対応を優先し、保存した波形と状況を医師・看護師へ共有してください。
心電図に加え、症状や血圧から中止を判断する考え方は、心臓リハビリを中止する症状と数値の目安も参考にしてください。
よくある質問
モニターの警報が鳴ったら危険ですか?
警報だけでは判断できません。設定された心拍数の範囲を外れた場合や、電極の外れ、体の動きでも鳴ることがあります。患者さんは自己判断で機器を操作せず、スタッフへ知らせてください。
毎回、心電図を付ける必要がありますか?
病状、運動時の反応、治療経過によって異なります。運動を始めた時期や、不整脈などを確認する必要がある場合には、継続して観察することがあります。必要な期間は担当者に確認しましょう。
心電図を付けていれば、少し無理をしてもよいですか?
心電図は異変を捉える助けになりますが、事故を完全に防ぐものではありません。指示された運動の範囲を守り、胸の症状や普段と違う息切れなどがあれば伝えてください。
自宅でも心電図やスマートウォッチが必要ですか?
全員に必要なわけではありません。医療機関での評価をもとに、運動内容と体調の確認方法を相談します。スマートウォッチの脈拍測定と心電図機能は異なり、運動中の医療用モニターをそのまま代替するものではありません。
参考:携帯型/装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント
まとめ
運動中の心電図は、心拍数、脈のリズム、心筋の血流不足を疑う変化を確認し、運動内容を調整するために役立ちます。症状や血圧も合わせて判断することが大切です。自分に合う運動と観察方法を、主治医や心リハ担当者と相談しましょう。
医療情報に関する注意事項
本記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療・運動処方に代わるものではありません。運動や薬の変更は医療専門職へ相談してください。強い胸痛、安静でも続く強い息苦しさ、失神などがある場合は、心電図の表示にかかわらず119番への連絡を優先してください。
参考資料
資料確認日:2026年10月10日
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2026年6月20日更新)。主に第3章のリスク分類・中止基準、第5章の運動療法を参照。
- 国立循環器病研究センター:安静時心電図検査
- 日本不整脈心電学会・日本循環器学会:2025年 携帯型/装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント
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